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描きかけの油絵~女性アルコール依存症者として生きる~

描きかけの油絵~女性アルコール依存症者として生きる~

池田倫子

はしがき

 第二次世界大戦後、わが国はめざましい経済復興を遂げ、物質文明において再び欧米と肩をならべる超大国になったが、これと並行して国民アルコール消費量も急上昇し、アルコール依存症患者が一挙に増えた。当初はもっぱら働き盛りの四、五十代男性に限られていたが、一九七〇年代後半からは女性のアルコール症者が急増しはじめ、最近では若年層から定年後の高齢者に至るまで、男女を問わずあらゆる年代層に浸透している。 全日本断酒連盟が誕生したのは一九六三年だが、東京、大阪などの大都市で女性会員の姿がみられるようになった一九七五年頃、当時の全断連会長大野徹氏が女性会員のための会を「アメシストと名付けました。なかなかお洒落でしょう。」と喜んでおられたのを思い出す。 私が池田倫子さんにはじめてお会いしたのは、大阪の池田市断酒会で催された研修会にご両親と一緒に参加されていたときだった。まだ断酒して日も浅い頃だったのか、遠方から参加されて慣れない土地だったからか、多少緊張しておられ、挨拶を交わした程度だった。唯、ご両親の一所懸命だったご様子が強く印象に残っている。 その後、一九九六年から自分ひとりの手で「しなのアメシスト」を発行されるようになり、私にも毎号送って下さった。まだ全国で酒害に苦しみ、断酒会があることさえ知らないでいる女性の仲間に広くメッセージを伝えようと必死になっておられる様子がうかがえ、私も二度ほど原稿を送ったことがあり、夏のしなのアメシストの集会に参加させていただいたこともあった。 その後、主治医の南風原泰先生のお勧めにより、体験記「描きかけの油彩画」を書きはじめられ、これが、この度一冊の書物として世に出ることになった。まことに喜ばしいことである。 断酒会では、そこに集う人たちが自らの体験を語り、聴くこと-唯そのことだけが最も大切なこととされている。これを日々繰り返すことによって、心の通いあう仲間ができ、過去の自らの姿を真正面から見据えることができるようになり、今日一日を大切に生き、酒を飲まないで生きる明日への力が生まれてくる。そして、人生には何ひとつ無駄な体験はないことを悟るようになる。 信濃を訪れたとき、倫子さんのお父さんがいわれた言葉は、いまも強く私の心に残っている。「わたしたちは十七年間、苦しんできました。実に長い歳月でした。しかし、決して無駄ではありませんでした。わたしたち親子には必要な歳月だったのです。」と。   二〇〇四年三月      今道裕之

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